まだ何者でもないきみへ



「きみの名を、僕は知らない」


 それは希望だった。あるいは祈りで、願いだった。

 皆城総士という役目を、運命を、背負って生まれてくるであろう、きみへの願いだった。

 フェストゥムに痛みを与えるために、抜けない棘として存在し続けるもの、それを世界は皆城総士とさだめた。

 だけれど、もしも、これを聞くきみが、まだ何者でもないのなら、みずから〝選ぶ〟ことを〝選べる〟のなら、その先に、きみの名は刻まれるだろう。

 きみは、きみだけの名を得るだろう。


「僕の名は、皆城総士」


 そうで在ることを、みずから選択し、その名を負い、誇り、その役目を生きたもの。


 僕ではないきみの名を、僕が知ることはない。知り得る術はない。きみは、僕ではないのだから。

 きみはきみの運命を生きる。

 きみが選んだ運命を生きるのだ。


 誰かが呼ぶきみの名を、きみが、愛しいと思える、そんな未来を。